暗がりの道標!スミツキカノコさんとノコギリダイさん! 小笠原

- 暗い岩棚の奥深く外洋の激しい流れから身を隠すように2匹のお魚さんが静かに寄り添っていました・・・この2匹はイットウダイ科のスミツキカノコさんとフエフキダイ科のノコギリダイさんですが何やらひそひそと内緒話をしているようです・・・赤く燃えるような頭部と鱗一枚一枚が金色に輝き尾鰭の付け根や背鰭・臀鰭の軟条部基底に黒い斑紋があることが特徴のスミツキカノコさんと地味ながらも背中に鮮やかな黄色い太陽のようなな斑点を宿したノコギリダイさんです・・・「ねえ、いつまでここに隠れているの?」スミツキカノコさんが大きな瞳をさらに見開いて隣のノコギリダイさんに問いかけました・・・スミツキカノコさんの夜行性の血は暗闇が深まるにつれて騒ぎ出しますがノコギリダイさんは「外は危険だ!もう少しここに隠れていよう!」と答えるばかりです・・・ノコギリダイさんの体にある黄色い斑紋は危険を察知したかのように心なしか暗く沈んで見えました・・・「僕たちはいつもあの大物たちに狙われている!ここにいれば安全だよ!」

- スミツキカノコさんは夜になれば岩の隙間を抜け出し単独で自由に暗闇の海を泳ぎ回るハンターであるのに対してノコギリダイさんは昼間に大きな群れを作り仲間とシンクロしながら生きる協調のお魚さん・・・そんな会話をしていた2匹に突然激しい潮流が岩棚を襲い大きな影が視界を遮ったのです・・・青い闇の向こうから現れたのは飢えた大型の回遊魚でした・・・「逃げろ!」スミツキカノコさんが叫び岩の複雑な隙間へと身を翻しましたがノコギリダイさんは戸惑いました・・・いつもなら群れの仲間と同じ方向へ一斉に逃げるはずのノコギリダイさんでしたが今はたった1匹・・・パニックになり外洋の広い方へと飛び出しそうになりましたがそこは捕食者の格好の餌食になる場所でした・・・「こっちよ!」スミツキカノコさんは赤い鰭を激しく動かしノコギリダイさんの目の前を横切りました・・・その鮮やかな金色の体が一瞬暗い海底で光の道標のようにきらめきノコギリダイさんはその光を目印に必死でスミツキカノコさんの後を追いました・・・2匹は捕食者の鋭いアゴが届かないさらに狭い岩の亀裂へと滑り込みました・・・外では巨大な影が悔しそうに何度か岩肌を叩きやがて諦めて去っていきました。

- 静寂が戻った岩棚の奥でノコギリダイさんとスミツキカノコさんは荒い息をなんとか整えていました・・・ノコギリダイさんは「助かったよ!君が道を照らしてくれなければ僕は今頃捕まっていたよ」・・・ノコギリダイさんは隣のスミツキカノコさんに深い敬意を抱きながら感謝を伝えました・・・スミツキカノコさんは少し得意げに尾鰭を揺らし「群れの中にいなくてもあなたは一人じゃないでしょ? たまにはこういうスリルも悪くないんじゃない?」・・・異なる性質を持つ2匹のお魚さんですがスミツキカノコさんは再び夜のような闇へとノコギリダイさんは昼の光を求めて群れの中へとそれぞれの道を進むのでした・・・しかしこの冷たい海の底でスミツキカノコさんの存在が確かに自分を救ったというノコギリダイさんの記憶は美しい鱗の輝きの中に残り続けるのでした。

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