ヘラヤガラ科はトゲウオ目に所属するお魚さんでヘラヤガラ属の3種が記載されています。英語圏ではトランペット・フィッシュと呼ばれています。ヘラヤガラ科のお魚さんは温暖な海のサンゴ礁や岩礁域で暮らしていて小魚さんや甲殻類を主に食べています。他の中~大型魚類に寄り添って泳ぐ習性が知られまた斜め向きあるいは逆さまといった特異な姿勢のまま漂う姿がしばしば観察されています。
意外と無精髭が味を出しているヘラヤガラさん! 小笠原
- サンゴ礁の岩陰に派手な色をしたトゲウオ目ヘラヤガラ科ヘラヤガラ属のヘラヤガラさんがヒョコヒョコヒョコと泳いでいました・・・世界中の暖かい海域のサンゴ礁や岩礁域などで暮らしている細長いヘラヤガラさんの全長は約1mほどで顔も細長く下顎部分には髭を蓄えていてこの不思議な形から英名ではトランペットフィッシュと名付けられています・・・海を泳いでいる姿はまさにトランペットの様なヘラヤガラさんですが和名の由来は料理で使われる竹ヘラと矢の棒の部分であるヤガラから名付けられています・・・ヘラヤガラさんは食べられる部分が少なく骨も多いため調理に手間がかかりますがかなり美味しいそうです・・・ヘラヤガラさんは環境に合わせて体色を変えられる特技も持ち合わせていて暗い色が多い海域では暗褐色となり珊瑚礁など色が多い場所では鮮やかな黄色になったりまた不規則な縞模様が現れることもあったりで個体変化が面白いです。

- こんな風にのんびり泳いでいるヘラヤガラさんですが食事をする時は普段の姿からは想像もできないほどのスピードで細長い口をストローのように使い獲物を吸い込んで食べてしまいます・・・弱肉強食の世界ですから普段とは違う姿でも生きていくために欺くことも大切ですよね・・・それから見た目がよく似たお魚さんでヨウジ目ヤガラ科ヤガラ属にアカヤガラさんやアオヤガラさんやマダラヤガラさんなどの4種がいます・・・ヤガラ科の仲間も細長い体型に細長い吻を持ち通常1m未満であることが多いのですがヤガラ類は口髭をもたず肛門の開口部が腹鰭のすぐ後ろに位置するなど差異は比較的大きく尾鰭は二又に分かれ中央の2本の鰭条が著しく伸長しています・・・もしかしてヤガラさんはヘラヤガラさんと違って顎の無精鬚を綺麗に剃って紳士然としているのでしょうか?・・・ちなみにアカヤガラさんは他のヤガラ科のお魚さんよりも魚体が大きく食味が良いと言われていて高級魚とされています。
どんな感情を抱いてる?便利で長い口を尖らせるヘラヤガラさん!
- トゲウオ目ヘラヤガラ科ヘラヤガラ属のヘラヤガラさんはいつお目にかかっても口を尖らせていますがそこまで口を長く尖らせるなんてよっぽど言いたい文句があるんでしょうね?・・・ちなみに口を尖らせている時は何かに怒りや不満を感じた時や集中して考えている時または軽い挑発や冗談を言う時などに起こります・・・感情は表情を大きく変えますが例えば鼻に皺が寄る上唇が上がる眉が下がる時は嫌悪の感情で笑顔や目尻の皺や頬が上がる時は喜びの感情です・・・また眉間に皺が出る目が鋭くなる唇が引き締まる時は怒りの感情で口角が下がる目が潤む眉が下がる時は悲しみの感情などです・・・表情は心の現われなので観察することができれば面白いかもしれません・・・それはさておきヘラヤガラさんは温暖な海のサンゴ礁や岩礁域で小魚や甲殻類を主に食べてのんびりと暮らしていますが他の中~大型魚類に寄り添って泳ぐ習性がある事が知られています。

- だからヘラヤガラさんはとてもフレンドリーで人づきあいがいいお魚さんなのかと思っていましたがどうも違うようです・・・何故ヘラヤガラさんが中~大型魚類に寄り添っているのかというと実は獲物から自分の身を隠して近づき捕食するというずる賢い習性だったのです・・・いやあ意外ですね!結構ダイバーにも親近感を持って近づいてくれるのでフレンドリーなお魚さんだと思っていましたが騙されていました・・・それからヘラヤガラさんは斜め向きあるいは逆さまといった特異な姿勢のまま漂う姿がしばしば観察されていますがこれも一種の擬態ですし体色も個体差が大きく海藻などに擬態して変化させることもできるそうです・・・ヘラヤガラさんって中~大型魚類に寄り添って隠れたり泳ぎ方を工夫したり身体の色を変化させたりして擬態するなどなかなかの曲者ですね。

- ヘラヤガラさんの仲間は左右に平たく側扁した細長い体型で最大で全長80cmほどに成長しますが吻は筒状に伸び下顎の先端には肉質のヒゲが存在し肛門は腹鰭よりもかなり後方に位置しています・・・近縁のトゲウオ目ヤガラ科ヤガラ属にはアカヤガラさんやアオヤガラさんやマダラヤガラさんがいますがヤガラ科のお魚さん達もヘラヤガラ科のお魚さんとよく似た細長い身体をしています・・・でもヤガラ科のお魚さん達は口ヒゲおよび背鰭棘条を持たないこと尾鰭が二又に分かれること肛門は腹鰭のすぐ後ろに位置するなどの形態学的差異によって鑑別できます・・・ところでヘラヤガラさんは何故こんなに長い顔をしているんだろうと思っていましたがこの細長い口はサンゴ礁域で効率よく捕食を行うために進化したそうです・・・ヘラヤガラさんは流れ藻やサンゴなど障害物の中へこの長い口をニュ~っと刺し入れて逃げ込んだ小魚を吸い込むようにして捕食するのだそうです・・・確かにこれだけ細長いと小さな隙間にもすうっと口を入れることができますからヘラヤガラさんも考えましたね!

- ヘラヤガラさんは黄色がかった色あいが特徴でときに眩しいほどの黄色い個体もいますがこの写真のヘラヤガラさんも太陽の光が当たって眩しいくらいの黄色に口の先端の青白いワンポイントが可愛く目立っていました・・・頭でっかちで馬面?キリン面?の細長いフォルムをしたヘラヤガラさんはダイビングをしていると遠くにいたのにいつの間にかすうっと近づいてきてまるで「ねえ!友達になってよ!」という感じでぬぼーと寄り添ってくるのです・・・その人懐っこさが私にはたまらなく可愛いやつと思えてくるのですがこのヘラヤガラさんの優しそうな眼を見ていると友達になりたいと思いませんか?・・・話は変わりますが実はアカヤガラさんは高級食材で知られいてほどよく脂が乗っており甘味や旨味が強く上品な味わいが特徴で弾力もあるので食感が楽しめます・・・でもアオヤガラさん・ヘラヤガラさんいずれも漁業的な価値がほとんどなく獲れても廃棄されてしまういわゆる「未利用魚」となってしまっています・・・アオヤガラさんはアカヤガラさんと比べて小さくて肉量が少なくヘラヤガラさんは小骨が多く食べづらいという流通する上で致命的とも言えるデメリットのためだそうです・・・人間の勝手な都合ですよね。

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