顎髭センサーで生き抜く海のハンターアカヒメジさん! 小笠原

- 写真のお魚さんはヒメジ科のアカヒメジさんという方ですが体側にある鮮やかな黄色の縦帯と黄色い背鰭と尾鰭が特徴で生きているときはこのように青みがかかった体色や白っぽい体色をしていますが死ぬと全体的に赤く変化することからアカヒメジさんという名がついています・・・ヒメジ科のお魚さんが持つ髭には厳しい海の世界を生き抜くための非常に重要なセンサーとしての役割がありますがその主な特徴と仕組みを紹介いたします・・・髭の表面には私たちが舌の上に持っている味を感じる細胞(味蕾)がびっしりと詰まっていて人間に例えるなら舌を外に伸ばして砂の中を探っているような状態なので触るだけで味がわかるのです・・・またヒメジさんの仲間は2本の髭を器用に動かして砂の表面や隙間をパタパタと叩くようにしながら泳ぎますがこれは砂の中に隠れているゴカイさんや小さなカニさん・エビさんなどの気配(味や匂い・感触)を髭で瞬時に察知し見つけ出すセンサーのような役割をしていて見つけた獲物をピンポイントで砂ごと吸い込んで捕食するのです・・・泳いでいるときや休んでいるときなどエサ探しをしていないときは下顎の溝に髭をピタッと折りたたんで収納しています。

- ヒメジ科のアカヒメジさんとちょっと言いにくいのですがオジサンさんの違いですが昼間のアカヒメジさんは外敵から身を守るために中層で大きな群れを作って浮いていますが夜になると本来の赤色に体を変化させ群れをバラバラに解散して砂底の獲物を探しに出かけます・・・アカヒメジさんが夜に赤くなるのは夜の海での完璧なステルス効果を得るためで水深が深くなったり夜になったりすると太陽光のうち赤い光の波長は真っ先に水に吸収されて届かなくなるためで赤い光がない環境では赤い体色は光を反射できず周囲からは真っ黒に見えるからです・・・昼間は中層で群れるために白&黄の目立つ姿をしていますが夜にバラバラになって砂底でエサを探すときは大型の肉食魚に見つからないよう赤に変身して身を守っているのです。

- 一方でオジサンさんは昼間にひとりで黙々と砂底に髭を突き立て忙しそうにエサを探していますが繁殖期になるとオスは体が紫色に激変し普段は底にいるとは思えないほど中層を激しく泳ぎ回ってメスに猛烈なプロポーズをするという情熱的な一面も持っています・・・オジサンさんの体色がコロコロ変わる仕組みですが体の中にある色素胞という特殊な細胞を神経やホルモンでコントロールして色を変えています・・・砂地にいるときは白っぽく岩陰に入ると一瞬で黒紫色の混じったまだら模様へと変化しますがこれは背景に溶け込んで天敵の目を欺くためです・・・また感情のバロメーターでもあり興奮したときやエサを前にしてテンションが上がっているときにも体色が激しく変わりますし特にオスはメスに求愛する際に普段の地味な色から鮮やかな赤や深みのある紫色へとド派手に変身し視覚的なアピールを行います。

- アカヒメジさんとオジサンさんとどちらが美味しいかというと一般的に市場での評価が高く料理人からもより美味しいと人気なのはオジサンさんのほうですがどちらも非常に個性的で美味な高級白身魚です・・・オジサンさんは主食がカニさんやエビさんなので身や皮にほのかな甲殻類の甘み・風味があり熱を通すと身がキュッと締まり特に皮に強い旨味と甘みがあります・・・おすすめは皮目を炙った炙り刺身や皮霜造り・フランス料理の皮をパリッと焼くポワレなどです・・・アカヒメジさんはしっとり柔らかい上質な白身でオジサンさんに比べると水分がやや多いのが特徴でクセのない上品な味わいですが新鮮なものは噛むほどに旨味が出てきます・・・おすすめは水分を飛ばして旨味を凝縮させる塩焼きや煮付け・サクサクのフライが絶品です・・・どちらも顎の下の髭で砂底を漁って暮らしているため水揚げされてから内臓の処理が遅れると身に独特の磯臭さが移りやすいという弱点がありますので釣った直後や市場でしっかり血抜き・内臓処理されたものが圧倒的に美味しいです。

- ちなみに何故オジサンさんという名前が付いたのかというと正面から見たときの顔つきにあります・・・下顎から伸びる2本の長い髭が人間の立派な口髭や顎髭のように見え正面から顔をじっくり見ると少し不機嫌そうでどこか哀愁漂う人間のおじさんの顔に見えることからそのままオジサンさんと名付けられました・・・小笠原諸島などではさらに親しみを込めてオジサマさんと呼ばれたり沖縄ではカタカシさんと呼ばれて親しまれています・・・ところでオバサンさんという名前のお魚さんは存在しませんが日本の一部の地域で地方名としてオバサンさんと呼ばれているお魚さんや名前にババ(老婆)が入るお魚さんなら実在します・・・地方名でオバサンさんと呼ばれるお魚さんですが一部の漁師町などで頭が大きくゴツゴツした姿のカサゴさんのことをオバサンさんと呼ぶ地域があります・・・諸説ありますが顔のシワや口を大きく開けたときの様子が口うるさいおばさんを連想させるからという少々毒のある理由から付いたと言われています・・・またババ(老婆)がつくお魚さんは鳥取県や兵庫県など日本海側で捕れる深海魚で正式名称はタナカゲンゲさんといいますが現地ではババアさんやババさんという衝撃的な名前で広く流通しています・・・これは顔が正面から見るとシワシワの老婆のように見えることから名付けられたそうで見た目は少しグロテスクですが味は非常に美味しく特に冬場に食べられるババア鍋はコラーゲンたっぷりの高級鍋として大人気です。


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