不気味な姿のエイリアン?もしかしてオオイカリナマコさん? 小笠原
- 今回小笠原に来て一本目のエントリーでいきなり不思議というか不気味な生物に遭遇してしまいました・・・サンゴ礁の底質が砂の場所などで長く伸びて這っている姿が見られる特に大きなナマコの1種で体幅は5 cm程度の円筒形で非常に細長く身体を伸ばした際は3 mにも達する無足目イカリナマコ科オオイカリナマコ属のオオイカリナマコさんです・・・写真のナマコさんはオオイカリナマコさんとはちょっと色合いが違うような気もしますがイカリナマコさんの1種で間違いないでしょう?・・・オオイカリナマコさんの体側面には管足が無く前端にはエイリアンの様な15本の触手がありそれぞれに羽状の20~30本の側枝が見られます・・・オオイカリナマコさんには申し訳ないのですが身体が捻じれてこんがらがっている様ですしそれにこの触手がちょっと気持ち悪いですね。

- オオイカリナマコさんの体壁は薄くて柔らかく半透明で粘稠状になっていて生きている時は収縮すると体表に様々な大きさの疣状の突起を生じますが死んでしまうと全て消えてしまいます・・・この写真のナマコさんも身体がプクプクしていてアートバルーンの様ですが体色は褐色や帯緑褐色や暗緑色そして暗青灰色など様々な変異が見られ一般的にはそれらのうちの2~3色が交互に縦列を成していてます・・・オオイカリナマコさんの動きは緩慢で胴体部はあまり動かないのですが触手だけは絶えず動かしていて触手を伸ばし砂を集めて口に運び砂に含まれている有機物を砂と一緒に食べるそうです・・・オオイカリナマコさんの長さは通常3 mほどあるのですがこれは水を吸って膨らんだ時の長さなので指で触れるなどの刺激を受けるとすぐに水を吐き出して縮んでしまい30 cm程度にまで縮んでしまうそうです・・・それにしても触手を動かし何かワシワシと一生懸命食べている様です。

こんな所に恐怖の大王オニダルマオコゼさんが!
- 岩の間で何かが動いたような気がしたので近づいてみると何とカサゴ目フサカサゴ科オニダルマオコゼ属のオニダルマオコゼさんではないですか・・・オニダルマオコゼさんは熱帯域のサンゴ礁など浅い海で暮らしていて日本近海では小笠原や奄美大島や沖縄周辺にいます・・・オニダルマオコゼさんの体長は40 cm程度で全身がコブ状の突起やくぼみに覆われていてパッと見ただけでは何処が顔なのか何処が口なのかよくわからず正に岩そのものに見えます・・・オニダルマオコゼさんは他のオコゼ類と同様に肉食性で小魚や甲殻類を捕食しますが浮袋を持たない底生魚で海底で動かずじっと獲物を待っています・・・獲物となるお魚さん達もここまで見事に擬態されると食べられるまで気が付かないですよね・・・ちなみに下の写真では上の方に口があります。

- オニダルマオコゼさんの背鰭の棘は毒があり非常に強力な神経毒であるストナストキシンを分泌するのです・・・このストナストキシンはハブ毒の30倍も高い毒性を持っていて刺されると関節痛や呼吸困難・心肺機能不全・血圧低下などの症状が現れる事があります・・・オニオコゼ亜科の仲間はすべて背鰭に毒腺を持っていますがオニダルマオコゼさんはとりわけ毒性が強く刺された人を死に至らしめることもあるのです・・・またオニダルマオコゼさんの棘は非常に硬く鋭いためゴム製のビーチサンダルやマリンブーツでは踏み抜く可能性があります・・・オニダルマオコゼさんは積極的に人間を襲うことはないので恐れ過ぎることは無いのですがオニダルマオコゼさんの存在に気がつかずに誤って踏んでしまわない様にだけは最大限注意しましょう。

- オニダルマオコゼさん以外にも気を付けるべき毒のあるお魚さんはたくさんいますがゴンズイ玉で有名なゴンズイさんも刺されると痛みや腫れを引き起こすことがありますしクサフグさんも体表に毒を持っているので誤って触れると中毒症状を引き起こすことがあるそうです・・・やっぱり知識は蓄えておかないといけないですね・・・オニダルマオコゼさんは日本では高級料理の食材としても知られていて確かに美味しいとされていますが食べる際には専門家の指導を仰ぐ方がベターだと思います・・・棘が刺さると大変ですからね・・・ちなみに上の写真では上の方にムッとした口がありますが下の写真は正面から撮ったもので下に口があり眼もわかりやすいのではないでしょうか?・・・毒は生命活動に不都合を起こす物質ですが例えばフグ毒は人間には致命的でもフグ自体には害を及ぼさないなど毒は生物によって異なる影響を与えます・・・毒と薬は表裏一体であり紙一重でありその境界は曖昧でまだまだ可能性のある不思議な世界です・・・世界には様々な強力な毒を持った生物たちがいますが近い将来強力で素晴らしい薬ができることを期待します。

サンゴさんをそんなに食べないでねオニヒトデさん!
- アカヒトデ目オニヒトデ科オニヒトデ属のオニヒトデさんはいつ見ても迫力なのですが多数の腕を持ちトゲトゲに覆われた輻長約15~30 cm の大型のヒトデさんです・・・オニヒトデさんはサンゴ礁で暮らしていて石灰藻やお魚さんなどの死体が分解してできた有機物であるデトリタスなどに加えて珊瑚さんを食べています・・・そしてオニヒトデさんは石灰藻やサンゴを食べる時は口から胃を出し裏返して広げて押し付け消化吸収を行うそうなのでバクバク食べるのではなくじゅわじゅわと溶かしながら食べているといった感じですかね?・・・上から見ているとわかりませんがこのオニヒトデさんも今胃を出してサンゴを食べているのでしょうか?・・・オニヒトデさんの寿命は6~8年で通常はミドリイシ類やコモンサンゴ類等の成長が早いサンゴを好むためサンゴ礁の多様性を維持する役目を負っていると考えられています・・・オニヒトデさんって言うとサンゴを破壊する悪いやつというイメージでしたが意外と役に立っているんですね。

- でも数年に一度オニヒトデさんは大発生することがありその時は成長の速いミドリイシ類やコモンサンゴ類を食べ尽くし成長の遅いサンゴまで食べるためサンゴ礁環境の保全上有害とされています・・・この大発生は自然の長期サイクルによるとする説と人間の環境破壊によるとする説がありますが富栄養化がオニヒトデ幼生の餌である植物プランクトンを増殖させ大発生につながるとする説が最も有力視されています・・・またオニヒトデさんは汚染に強いこととあいまって大発生のサイクルが短くなっているという指摘もあります・・・そんなオニヒトデさんにも天敵が存在していてオニヒトデさんを食べてしまう生き物としてフリソデエビさん・モンガラカワハギさんやフグさんの仲間・ハタさんの仲間・オウギガニさんの仲間がいます・・・それからホラ貝さんもヒトデさんが好きでオニヒトデさんを食べるためオニヒトデさんの天敵とされていいますが摂餌頻度が低く生息数も少ないため駆除方法としての実用化にはならないようです・・・それからオニヒトデさんの体表面には多数の有毒の棘が生えその棘に刺されると激しい痛みを感じアナフィラキシーショックに陥ることもあるのだそうです・・・だからもしオニヒトデさんに刺された時はなるべく早くポイズンリムーバーで血液を吸引した後に温湿布で患部を温めるといいそうです・・・とにかく刺されたら速やかに病院に行きましょう。

オビクラゲさん教えて!ヴィーナスは帯締めるのかな?
- オビクラゲ目オビクラゲ科オビクラゲ属のオビクラゲさんは他のクラゲさんの様に球形に近い形でフワフワと漂っているものと違って極端に扁平で細長い帯状の形をして浮遊しています・・・オビクラゲさんはその美しさからヴィーナスの帯という別名がつけられているそうですが確かに優雅に漂っている姿はなんとも美しく神秘的な感じでした・・・日本的に言えば天女の羽衣といった感じでしょうか?・・・分類的にはカブトクラゲさんやフウセンクラゲさんと同じ仲間になりますが長さは通常80cm以下で大きいものは1mから時には1.5mにも達するものもあるそうです・・・幅は約8cm程度ですがこの短い方向が体の縦軸方向になり真ん中あたりの色が変わって筋のようなところがありますがその先端が口になります・・・「え!そんなところに口があるの?・・・細長い方の先端のどちらかが口じゃないの?」と思いますよね。

- オビクラゲさんは全体が透明なのですが黄色や紫の斑紋がその両端に出るものがあります・・・また同じような色が帯の横方向の真ん中あたりにある筋のような水管や口から伸びる両翼の先端にある触手に出るものもいるそうです・・・クラゲさんと言うと触手に触れるととんでもなく痛いというイメージですがこのオビクラゲさんの触手にも毒はあるそうですが触ってもそんなに痛くないそうです・・・オビクラゲさんはミジンコのような小型の甲殻類を捕食するのですが捕食の際には縦方向というか口方向に水平にグライダーの様にブーンと移動します・・・また敵から逃げる時には蛇のように全身を波打たせて横方向に素早く動くこともできます・・・臨機応変でなかなか器用なオビクラゲさんです・・・初期にはフウセンクラゲ型のような楕円形をしていますがその後に左右に伸びるように成長して成体の姿になります・・・近縁のものには形態的に似ている小型のコオビクラゲさんがいますがこれは20cmほどと遙かに小さく沿触手面の櫛板列を完全に欠くことや水管の配置に違いがあることなどから別属とされているそうです。
直ぐに逃げないで!黄色い帯が特徴のオビシメさん! 小笠原



- 遠くにかすかに黄色い帯が見えたので驚かさないように少しずつ近づいてみるとそれは小笠原の固有種とされていますスズキ目ブダイ科アオブダイ属のオビシメさんでした・・・何か一生懸命ついばんでいましたがオビシメさんは藻類を食べるとされていますのでおそらく藻を食べていたのでしょう・・・それにしてもなかなか警戒心が強い様でこちらの様子を伺いながらでもお腹が空いているのでしょうか夢中でついばんでいます・・・オビシメさんの名前の由来はご想像の通り帯締めを意味しオスの体側の中央にある黄色の横帯に由来しています・・・オビシメさんの全長は70cm程度でメスは黄色い体側で後方に白色の縦帯があってオスとは全然違いますがオスは青地の体側の中央に黄色の横帯がありこぶが盛り上がっております・・・形からしてかつてはアオブダイさんと同種とされていたのも納得です・・・オビシメさんは小笠原の固有種とされていますが実は八丈島でも確認されております・・・オビシメさんの詳しい生態はあまり分かっていませんが他の多くのブダイさんと同じようにメスからオスへと性転換すると思われています・・・それにしてもオビシメさんはブダイさんに誰かがペンキでいたずらして黄色く帯状に塗った様な感じで不思議な印象です。





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