チョウハンさんは成魚と幼魚でここまで違う生存戦略! 小笠原

- アジアコショウダイさんの周りをちょろちょろ泳ぎ回っているのはアライグマのような目元の黒い模様が特徴のスズキ目チョウチョウウオ科チョウチョウウオ属のチョウハンさんではないでしょうか?・・・チョウハンさんって変わった名前ですが和名の由来は顔の模様が平安後期の伝説の大盗賊・熊坂長範が舞台で用いる長範頭巾に似ていることから長範(チョウハン)と呼ばれる説と体側の模様から蝶斑(チョウハン)とする説があります・・・私は伝説の大盗賊・熊坂長範説の方が好きですが英名はRaccoon(アライグマ) butterflyfishと言います・・・チョウハンさんの全長は最大で20〜25cm程度で岩礁域やサンゴ礁に広く分布していて夏場には潮だまりで幼魚がよく見られます・・・チョウハンさんは成長に伴いその姿を大きく変えることで知られていますがチョウハンさんの幼魚の背鰭にある黄色く縁取られた黒いスポットは捕食者にどちらが頭かを誤認させるための偽眼の役割を果たしています・・・敵が偽眼を狙って攻撃してきた隙に本物の頭がある反対方向へ素早く逃げるための生存戦略です・・・チョウハンさんは大きな群れは作らず単独またはペアで行動することが多くチョウチョウウオさんの仲間には特定のサンゴのポリプしか食べない偏食種が多いのですがチョウハンさんは広食性の雑食種で小動物や藻・サンゴのポリプなどを食べています。

- 繁殖期になると雌雄が夕方に中層へ向かって泳ぎ上がり一瞬のうちに放卵・放精を行いますが受精卵は数日間ほど海流に乗ってプランクトン生活で漂います・・・その後トリクティス仔魚と呼ばれる最大の特徴である頭部が頑丈な骨板で覆われたチョウチョウウオ科特有のユニークな形態に変態し数週間かけて沿岸の岩礁域へと着底します・・・トリクティス仔魚とはチョウチョウウオ科やサザナミヤッコ科の魚類が卵から孵化した直後のごく限られた期間にのみ見せる非常に特殊でユニークな幼生の形態です・・・トリクティス仔魚は頭から背中・胸元にかけてカブトやヨロイのような硬い板が発達しており成魚の優雅な姿からは想像もつかないまるで怪獣やエイリアンのような異様な姿をしています・・・また骨板の後端からは体長に対して非常に長いトゲが後ろ向きに突き出していますが浮遊期の仔魚の天敵は小さな肉食性のプランクトンや他の魚の幼魚です・・・頭部を硬くし大きなトゲを張ることで天敵の口に入りにくくするという防御効果を発揮しますし水中で体表面積を広げる役割も果たしこれにより余分なエネルギーを使わずに水中で浮きやすくなるメリットがあると考えられています・・・トリクティス仔魚は外洋のプランクトン生活を終え沿岸のサンゴ礁や岩礁地帯にたどり着くとこの骨板は急速に退縮して皮膚に吸収されるか脱落します・・・着底した仔魚はわずか数日のうちに私たちがよく知るミニチュアのチョウチョウウオさんへと劇的な変態を遂げます。

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